夜の珍入者と寮の新しい住人

寮の私達の部屋
日曜日の午後、きよちゃんとテレビでF1を見ていると、3階のフロアの入口が開く音がするのでびっくりしてきよちゃんが部屋を出ていくと、フラウ・ハイン(学長)がこの寮に住む生徒を案内してきたようでした。私は初めて見るF1に興奮して、テレビに釘付け状態で、「この寮に住むなら、どうせいつでも会えるし」といった失礼な態度で、出ていきませんでした。
きよちゃんが少しすると戻ってきて、「日本人の大学生の女の子やったで。一通りキッチンとバスルームと、冷蔵庫の中を分けて使う説明しといた。けど、小さい声で返事しただけで、すぐ部屋に戻ってった。」と言います。ふぅん、日本人の女の子か、安心だ。F1が終わって、キッチンで一服していても、その彼女がやってくる気配はありません。夕食を作っていても彼女は現れませんでした。どうやら出かけていて、外で食事してくるようです。やっと夜になって、彼女が現れました。挨拶して、少し話をすると、彼女は「26歳の人がいるって聞いてたから、すごく心配だったんですけど、ゆみこさんみたいな人でよかった。」と言いました。いったい、彼女はどういう心配をしていたんだろう・・・?
彼女は広島の大学でドイツ文学を専攻している21歳の女の子で「きみちゃん」という子でした。やはり私と同じように、一人でシンガポール航空で来たそうです。
夜、ドイツの住宅は断熱性と気密性が高いのか、窓を閉め切って寝ていると暑いので、窓を少し開けて(内倒しにした開け方)寝ました。網戸がないのが気になりましたが、日本ほど蚊はいなさそうだったので、蚊に刺されなければいいや、と思っていました。夜中、なぜか目がさめました。窓の下に温水暖房機があり、その前にベッドがあり、私は窓の真下で寝ていました。何かが動いている気配がします。急いでふとんを頭からかぶって、様子をうかがっていました。顔をふとんから出すのは恐いので、音だけを耳をすまして聞いていました。
すると、パタパタパタと何かが飛んで、壁にぶつかる音がしてカシャカシャという音がします。しばらくシーンとしていたかと思うと、またパタパタパタと何かが飛んで今度は窓にぶつかり温水暖房機に落ちたようです。温水暖房機の上を歩いている音がします。私のすぐ頭上です。ねずみ?いや、ねずみが飛ぶわけがない・・・。私はすっかりおびえてしまったせいか、正確な判断さえできなくなっていました。しばらくするとまた飛んでぶつかって歩いて、を何度か繰り返していましたが、窓から出ていく気配はありませんでした。飛ぶとパタパタ音がする生き物ってなんだろう?必死に考えましたが、「大きな蛾」以外は思い浮かびませんでした。
しょうがないので、「何かが部屋の中にいる!」ときよちゃんを起こしました。きよちゃんも虫類は苦手なので、音を聞いておびえています。けど、2人でおびえていてもしょうがないので、きよちゃんが窓を開け放ち、その生き物がいる方に行き、窓から出るように追い払いました。やっと出ていったようで、きよちゃんが窓を閉めて言いました。「コウモリやった。」なんで、コウモリがーーー!!!そういえば、夕方になると、コウモリが飛んでいました。すっかり目が覚めてしまい、キッチンで一服することにしました。